185mlと350mlの缶ドリンクが同じ値段ってことに
何の違和感も感じなくなった時、
僕は大人になったんだ。
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人生とはつまり、敗北の積み重ねである
コンビニへ行ったんです。
略さず言うとコンビニエンスストアですね。
まぁ、毎日のように行くんですけどね。
ある日、コンビニで人生のどん底を味わいまして、
今日はその話をちょっと聞いてもらおうかと。
少し長くなりますけど、
お時間のある人は聞いてみて下さい。

なんじゃかんじゃ買うものを選びまして、
レジにいたアルバイトさんにその品物を渡しました。
まぁ、普通のことですね。

 ピッ。ピッ。ピッ。

みたいな音が聞こえてきます。
アルバイトさん、がんばって働いてます。
若いのにえらいですね。

 ピッ。ピッ。ピッ。
 820円になります。

どうやら僕のお会計は「820円」のようです。
レジにも「820円」と表示されています。
財布の小銭入れゾーンから、
500円玉を1枚と、100円玉を3枚、
そして10円玉を2枚とりだしました。
合計すると「820円」の小銭です。
んで、それをやわらかいトゲトゲのやつに乗せまして、
若いのにえらいアルバイトさんが
丁寧に袋詰めしてくれた品物を受け取ろうとした、
まさにその時、そう、まさにその時、
若いのにえらいアルバイトさんが、こう言いました。

 820円からでよろしいですか〜

……ワッツ?
僕は耳を疑いました。
聞き間違いかと思い、もう一度、
若いのにえらいアルバイトさんが言った台詞を思い出しました。

 820円からでよろしいですか〜

間違いなく若いのにえらいアルバイトさんは
そう言いました。そう、言ったんです。

この時の僕の心境を一言で表現するなら……そう、パニック。
これはもう、かなりのパニックです。
わにわにパニックなんて比じゃないくらいのパニックです。
パニックルームのあの場面のジョディフォスターに
勝るとも劣らないくらいのパニックです。

だって、そうでしょう。
この若いのにえらいアルバイトさんの

 820円からでよろしいですか〜

って台詞の行間を読むとするなら、
それはつまり、

 (もっとベストな払い方ありますけど)
 820円からでよろしいですか〜

ってことです。
もしくは、

 820円からでよろしいですか〜
 (僕ならもっとベストな払い方しますけどねぇ……)

ってことです。

パニックでしょう。
これは100人いたら99人がパニックでしょう。
(パニックにならない一人は、もちろん、
 若いのにえらいアルバイトさんです)

昭和50年の雪の降る夜、
日いづる国日本に生まれ丸37年。
820円の商品に対するベストの支払方法は
820円を支払うことだと信じて疑っていませんでした。

なのにこの、
平成生まれ平成育ち
若いのにえらいのはだいたい友達
ってな感じの若いのにえらいアルバイトさんは
820円の商品に820円を支払うよりも
もっと効率的な支払方法を知っているのです。

この時の僕の心境を一言表現するなら……そう、敗北感。
「人生の価値は生きた長さでは決まらない」
とは、かの文豪ヨーネイ・ノナンソが残した金言ですが、
まさしく、この時の僕の頭には、
その金言が鳴り響いていました。
若いのにえらいアルバイトさんの人生に比べると、
僕の人生のなんとちっぽけなことか……。

そんなちっぽけな僕ですから、
若いのにえらいアルバイトさんの

 もっとベストな払い方ありますけど
 820円からでよろしいですか〜
 いや、お客様がそれで良いなら、良いんですよ
 ただ、僕ならもっとベストな払い方しますけど
 820円からでよろしいんですね?
 よろしいんですね?

の問いかけに

 は……はい……

としか答えられませんでした。
37年も生きてきた僕ですから、
それなりに敗北感を味わったこともありますが、
この日の敗北感は、今までに味わったことのない敗北感でした。

実は、物語はこれだけでは終わりませんでした。
その2日後に、また僕は敗北感を味わうことになるのです。
場所はもちろん、同じコンビニ。
レジ担当はもちろん、若いのにえらいアルバイトさん。

その話は、また後日。


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